【結論】
「猫の室内飼いは絶対にやめてください」という主張に対しては否定的な見解が多く、筆者も反対派です。一昔前までは猫は放し飼いが主流でしたが、現在では放し飼いは非推奨・室内飼育が基本であると行政・獣医師なども通達しています。
猫の飼育方法は室内飼育が原則です。ただ、ネット上には「猫の室内飼育は絶対にやめてください」という強い反対意見も見受けられます。どうして、そうした声が上がっているのか?
今回は猫歴20年以上の筆者「たけのこ」が、「猫の室内飼育は絶対にやめてください」という主張について解説します。
現在では完全室内飼育が主流です
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猫の室内飼いは絶対にやめてくださいという意見が出た理由
ネット上で見受けられる「猫の室内飼いは絶対にやめてください」という意見。まずは、その理由について解説します。
室内飼育は猫にとって監禁・虐待だから
猫の室内飼いは絶対にやめてくださいとコメントされる方の考えとして、猫にとって室内飼育が監禁・虐待に該当するようです。外を自由に動いて過ごしていた猫が狭い室内に閉じ込められるのは可哀そうと感じるため室内飼育に反対されるそうです。
ただし、猫が外を自由に歩く動物というイメージは一昔前の放し飼いが主流だった時代の話です。また、室内だけで暮らすのが窮屈なのは人間の価値観です。元々猫は広い空間を必要としない動物。室内が安全な縄張りであれば、室内飼育でもストレスなく暮らせます。
「安全のため」は人間のエゴだから
猫は外を自由に歩くべき、という主張を軸にして、次に挙げられるのが「安全のため」という室内飼育派の主張は人間のエゴであるという意見。安全のために猫を室内飼育に閉じ込め飼うのは、人間が勝手に思っていること。結局は人間の都合で猫を閉じ込めているだけと考えるそうです
たしかに室内飼育は人間の都合で、猫自身の意見を尊重したものではないという点は否定できない部分があります。一方で猫にとって危険を伴う放し飼いを良しとするのもまた同じ人間のエゴ。猫の考えが分からない以上、どちらも人間のエゴであることに変わりはありません。
野良猫の室内飼育は苦労が多いから
一方で元野良猫を室内飼育しようとすると、外に出たそうにして見ていられないという声もあります。たしかに元々、外の世界に縄張りを持ち広い範囲を自由に動き回っていた野良猫が、急に室内のみで過ごすのは難しいです。慣れない暮らしにストレスを感じ、外に出たがる素振りを何度も見せます。その姿に罪悪感や後ろめたさを感じる方も少なくありません。
ただし、後述しますが外の世界には猫にとって危険な存在が多数います。データ的にも猫の寿命が短くなる懸念もあるため、やはり放し飼いは好ましくありません。猫を長生きさせたいのであれば、室内飼育に慣れるまで飼い主さんも辛抱強く耐えることが求められます。
猫を放し飼いにするリスク
近年の調査で、放し飼いによる猫への危険が判明してきました。そのひとつが、放し飼いによって猫の寿命が短くなる点。一般社団法人ペットフード協会が実施する全国犬猫飼育実態調査によると、外に出ると回答した猫の平均寿命が14.24歳であるのに対し外に出ないと回答した猫の平均寿命は16.02歳でした。およそ2歳以上の寿命差が室内飼育と放し飼いの猫には存在します。
いったいどんな要因で猫の寿命が短くなるのか、より詳しく解説します。
感染症のリスク
まず挙げられる危険が感染症を引き起こすウイルスの存在です。猫も人間と同じようにウイルスに感染し病気を引き起こすことがあります。猫の感染症の一部として以下が挙げられます。
- FIP(猫伝染性腹膜炎)
- 猫白血病ウイルス
- 猫パルボウイルス
- 猫免疫不全ウイルスなど
これらの感染症は猫にとって非常に危険な存在。ワクチンも決して万能薬という訳ではないため、場合によっては重篤化してしまうケースも少なくありません。
ノミ・マダニなどの害虫被害
ノミ・マダニも猫にとっては大きな脅威。猫がアレルギーを引き起こす他、痒みを伴う皮膚炎の原因などになったりします。中でも危険なのがマダニ。人獣共通感染症を媒介する存在で猫だけでなく人間にも危害を加えます。
室内飼育で適切な予防をしていれば、ゼロとはいかずとも寄生する確率を下げることはできます。一方で猫を放し飼いし、ノミ・マダニがいるエリアへ自由に出入りさせてしまうと感染リスクがかなり高くなってしまいます。
事件・事故に巻き込まれるリスク
交通事故などに巻き込まれる猫も少なくありません。猫は警戒心が強いので、交通事故にも遭いにくいだろうと思いこまれている方もいますが、実際は事故発生件数は多め。認定NPO法人 人と動物の共生センターが実施した全国猫のロードキル調査(2019)によると、約28万9,572頭が被害に遭ったそうです。
人間だって交通事故に遭います。猫も例外ではありません
カラスなどに襲われケガを負う
外の世界にはカラスなど猫にとっての天敵も存在します。そうした外敵に襲われることで、怪我などを負い重篤な状態に陥る危険もあります。カラス以外にもハクビシンなど野生動物の多くが猫を襲う可能性を有しています。
心無い人間に虐待されるリスク
悲しいことに人間の中には猫を虐待する非人道的なものもいます。当然、それらの行為は犯罪です。
公益財団法人動物環境・福祉協会Evaが実施した動物虐待統計2022年度では被害動物のうち、約43%は猫であり被害件数が最も多い結果となりました。この調査では、飼い主によるネグレスト(飼育放棄)や遺棄なども含まれますが。それでも、少なからずそうした人間がいるということが分かります。
放し飼いにしていると、そうした人間たちの被害に遭うリスクも出てきます。
猫は本来そこまで広い範囲を縄張りとしない
狭い室内空間に閉じ込めるのが可愛そうという主張がありますが、猫は元々、安全が確保され満足度が高い空間であれば広さはそこまで重要視しない動物です。ワンルームや1Kであっても問題なく過ごせます。
野良猫の場合は、外の世界から室内での暮らしへの移行に慣れず落ち着かない行動をみせることが多めですが、一旦落ち着けば室内飼育でものんびり暮らせるようになります。
行政や獣医師の見解も「室内飼育推奨」
室内飼育と放し飼い。どちらにすべきかは、行政・獣医学の観点からも答えは出ています。
環境省や各都道府県(東京都など)では、近隣住民間でのトラブルと猫の健康被害を考慮し、猫の完全室内飼育を推奨しています。また、公益社団法人埼玉県獣医師会でも室内飼育を推奨しています。
こうした影響もあり、猫を完全室内飼育する飼い主さんの数は徐々に増加しつつあります。一般社団法人ペットフード協会 全国犬猫飼育実態調査をみると、屋内飼育のみと回答する方が全体の8割近くを占めています。少しずつではありますが、その割合も増えつつあります。反対に主に屋外で飼育していると回答している飼い主が減少しつつあります。
室内飼育における大事なポイント
放し飼いよりも室内飼育の方が推奨されていると解説しましたが、室内飼育にも解決すべき課題・意識しなければならない注意点があります。それを怠ってしまうと、放し飼いとは別のリスクを抱える結果となりかねません。
ここでは室内飼育において意識したいポイントを解説します。
キャットタワーなど高い場所がある環境づくり
猫にとって高い場所というのは、自分の縄張りを一望するために重要なスポット。室内飼育の猫にとって部屋の中こそが自分の居場所であり、縄張りです。部屋の中を眺められるように居場所を用意してあげることは猫のストレス軽減に大きく貢献します。高い場所に上り下りすることで運動不足の解消に繋がるメリットも。
キャットタワーやキャットウォークなどの猫用品を設置する以外にも、タンスや本棚を連結させてあげるだけでも使ってくれることがあります。窓際に高い居場所を用意してあげると、猫が外の景色を眺めることでよい刺激を感じられるようになります。
猫が安心できる居場所を用意
高い場所の他に、猫が安心して過ごせる居場所を用意してあげるのも大事です。具体的には狭くて暗い猫が隠れやすい場所。敵に奇襲される心配が少ない隠れ家は、警戒心が強い猫にとって安心して休めるスポット。突然の来客や大雨が打ち付ける音、祭りが催され花火などの音など猫がビックリするような事態が発生したときに、身を隠せる隠れ家があると猫のストレスが大きく軽減されます。
隠れ家は猫用品でもOKです。最近の猫用品はバリエーションが豊富で隠れ家代わりになるハウスもたくさん販売されています。お金をかけなくてもお家のスペースを活用したりダンボールハウスを作ってあげるのもオススメです。
筆者宅では、隠れ家としてクローゼットを採用。正確には飼い猫が勝手に隠れ家として活用し始めたのですが満足しているようなので、そのままにしています。
お洋服に毛が付くのは諦めています
爪とぎをはじめ猫飼いに必要なものを揃える
猫を室内で飼うとき、必要なものを揃えることも重要です。
- 猫用食器・猫用飲み水容器
- キャットフード
- 猫トイレ・猫砂
- 爪とぎなど
特に重要なのが爪とぎです。室内にしっかり猫との相性が良い爪とぎを用意してあげないと、ストレスを溜め込んだり家具や壁で研いだりします。相性のいい爪とぎは猫の性格によって様々。ただ、中でもオススメなのが縦置き型のダンボール爪とぎ。ダンボール製爪とぎは比較的安く、コスパも良好。縦置き型は縦の空間を活用するため設置スペースを節約できます。
爪とぎに関しては下記の記事を参考にしてください
爪切りも大事
室内飼育の猫は飼い主さんによる爪切りも重要。放し飼いの猫は外を歩いているうちに、爪先が摩耗しますが室内猫にはそれがありません。あまりにも爪が伸びすぎると、カーテンやカーペットに引っかかって危ない目に遭ったり飼い主さんが引っ掻かれたとき深手を負う危険が高くなります。
イタズラ対策は必須
室内飼育の猫は家の中こそが、自分の縄張り。だからこそ、いろんなところを探検して潜り込んだり漁ったりします。ただ、家の中には猫にとって危険なものもたくさんあります。
たとえば、キッチン・シンクには調理で使う包丁や猫が中毒を起こしかねない食材が置かれていたりします。誤飲誤食も怖いです。食材だけでなくマスクの紐などを誤って飲み込んでしまう猫もいます。
そうしたイタズラで猫が危ない目に遭わないよう飼い主さんによる事前対策が必要です。それぞれの対策については下記を参考にしてください。
脱走対策も意識するべき
好奇心旺盛な猫の中には、室内で飼われていても外に脱走してしまうケースがあります。ただ、突発的に家を出た猫たちは前述した外の脅威に怯えるだけでなく、パニックになってどうやって家まで戻ればいいか分からず迷子になってしまうことが多々あります。
脱走を不幸な別れにしないためにも、猫を室内飼育するときは脱走対策についても考慮すべきです。具体的な対策については下記の記事を参考にしてください。
筆者も昔は放し飼いだったが現在は完全室内飼育派
元々、筆者も20年以上前、猫を飼い始めた頃は半放し飼いでした。基本的には室内飼いですが、ときどき敷地から出ないよう囲った庭に飼い猫が出られるようにしていました。
当時はインターネットがそこまで普及しておらず、情報が簡単に得られない時代。猫について学ぼうと思ったら本を読むか獣医師に話を聞くかくらいでしたが、どちらも難しく解説しがち。正直、あまり頭に入りませんでした。一昔前は、猫は放し飼いでOKという風潮があったのも大きかったと振り返ります。
当時の先代猫は長生きしてくれましたが、それはあくまで運が良かっただけ。もしかすると、不幸な別れ方をしていたかもしれません。現在では放し飼いがよくなかったことを知り、いまの飼い猫は完全室内飼育です。
猫の飼い主なら一冊くらいは飼育本を読んでおくべきです
あくまでも放し飼い推奨は意見のひとつに過ぎない
「猫の室内飼いは絶対にやめてください」という主張は、あくまでも一部の人が主張しているひとつの意見に過ぎません。たしかに、猫を室内に閉じ込めるといった言い方は残酷な印象を感じさせます。長生きのために室内に閉じ込めるのは人間のエゴであるという主張も間違ってはいないかもしれません。
その一方で、逆に放し飼いを良しとするのも同じくエゴであり、周囲への猫害や猫自身の健康を損なうリスクも考えるべきです。猫自身の意見や主張が分からない以上、どちらが絶対の答えであるかは分かりません。
猫を放し飼いにすることで近隣住民を困らせてしまう可能性や大切な愛猫を事故で失う確率もゼロではありません。個人の意見がどうであれ、社会全体としては完全室内飼育が推奨されています。自分の考え方だけで放し飼いを行い、周囲に迷惑をかけている飼い方は飼い主としての責任を果たしているとは言えません。
今回の記事を参考に、猫を長生きさせたいのであれば室内飼育を前向きに検討してください。